買うこと、食べること

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私の自宅付近には麦畑と田んぼが広がる癒しのゾーンがあり、その合間を縫うように走る道を通るときは、頭の先からじゃばーっと水をかぶった時のような、浄化された気持ちになる。
 少し前までは黄金の麦の穂と田んぼの水面の煌めきを同時に眺めていたのだが、あっという間に麦は刈り取られ、田んぼは水面が見えないほどびっしりと稲の緑で覆い尽くされた。強烈な暑さにも関わらず、稲がわさわさと揺れる姿を見ると涼やかな気持ちになるので本当にありがたい。


 このゾーンで心を涼めることができない時は、旬の緑のものを調理して目を癒しているのだが、その中でもブーム化している食材が「おかひじき」と、「つるむらさき」だ。どちらも地元の方が育てられている野菜を販売している場所で出会い、どう食べるか?とこわごわ購入して調理してみてからその美味しさに感動し、それ以来出会うたびにどっさりとカゴに入れて買って帰るのである。

葉っぱの形が海藻のひじきに似ていることから「おかひじき」と呼ばれる野菜。山形県置賜(おきたま)地域の伝統野菜で、地元の方々には非常に親しまれている食材だそうだ。栄養価も優れていて、カロテンやビタミン、カルシウムなどが豊富な上に低カロリー。加熱しても鮮やかな緑色を保ち、苦味などはなくシャキシャキした食感で、さまざまな料理に合わせることができる。下茹でもあっという間。


 1Lの沸かしたお湯に小さじ2杯ほどの塩を入れ、少し太い茎の部分からさっと湯がく。1分ほどでおかひじきをあげ、氷水に落とす。水気を切って冷蔵庫で保存。

 下茹でしたおかひじきは、そのままポン酢や麺つゆ、ごま油などをかけて食べたり、海藻サラダと合わせてドレッシングをかけたり(胡麻ドレッシングも合う!)するのは勿論美味しいのだが、最近個人的にハマっているのは、春雨と薄切りの豚肉を湯がいたものに温かい鶏がらスープを注ぎ(冷房の効いた部屋ではあったかいスープが飲みたくなる)、ごま油をひと回ししたら下茹でしたたっぷりのおかひじきをトッピングする食べ方。妊娠してから麺ばかり欲するようになり、毎日昼にはうどんか素麺を調理して食べていたのだが、どうにも食後にだるくなり、炭水化物を減らしてみようと試みた結果生まれた麺料理。塩分だけは気をつけないといけないけれど、どれだけ食べても罪悪感はなく、食後のだるさも改善された気がする。(科学的根拠はない。)冷たくしても美味しい鶏がらスープに浸したおかひじきは目にも鮮やかでますます食欲が増す。しゃきしゃきの食感を保つため加熱のしすぎには要注意だが、本当にどんな味付けにも合うので万能だなあとほれぼれしながら今日も口いっぱいに頬張っている。

 もう一つのハマっている旬の野菜の「つるむらさき」。元は観葉植物や紫色の染料として使われていたが(原種は茎が紫色)、その後食用として栽培されてきたようだ。珍しいものを食べるときにいつも思うが、この食材を初めて口にしてくださった方、そして栽培を続けてくださった方々には感謝しかない。この野菜も福島や宮城、山形での生産が盛んだそうで、改めて東北は美味しい食べ物の宝庫だなと思う。
 つるむらさきもβカロテンやマグネシウムなどのミネラル、食物繊維が豊富な緑黄色野菜。こちらも簡単に下茹でするだけで美味しく食べることができ、葉物が減る夏場には実に重宝する存在だ。モロヘイヤのような独特のねばねば感があるのが特徴で、体にいいもん食べれるなあと、幸福感に浸ることができる。

 こちらも1Lのお湯に小さじ2杯ほどの塩を入れ、まずはつるむらさきの茎の部分を1分ほど茹でる。1分経過したら葉の部分を投入し、30秒ほどさっと火を通したら湯からあげ、氷水に落とす。水気を切って冷蔵庫で保存。

下茹でしたつるむらさきはシンプルにお浸しにしてたっぷりの鰹節をかけて食べもよし、味噌汁やスープの彩りにさっと加えてもよし。油との相性も良いので、生のままベーコンや魚介類などと炒めても美味しい。茎はわりと太めなので食べ応えもあり、食べた時の粘りがたれともよく絡んでくれる。
 和・洋・中どんな料理にも合う夏に大活躍のつるむらさき。ああ、明日も食べたい。

日本には海外から輸入した食材で溢れていて、それによって食生活を支えられている部分は大いにある。勿論その国ならではの美味しさもあるのだが、他国の戦争やコロナなどによってこれまでのように食材が海外から入らなくなった今、改めて日本で生産されている食材の素晴らしさを見直すきっかけを与えられているように思う。日本で生産されている食材も、なぜきゅうりはまっすぐでないといけないのか、なぜとうもろこしの粒が綺麗に揃ってないといけないのか、規格に合わない形のものはなぜ安くで売られなければならないのか、自宅で調理するための食材を購入する場所において、必要はないと感じる“規格“があまりにも多いように感じる。温暖化による異常気象も続き、今までのように野菜や魚、肉や穀物を育てて販売することが難しくなってきている。この自然の変化の中で生産者の方々は生産手段等の変化を余儀なくされているのだから、消費者もその意識や行動を変えて行かなければならない。たくさんの方々の時間と愛情、肉体的な労働と勿論お金。たくさんのものをかけて作られたものを頂いて、消費者は生かされている。共に良い方向へ向かっていけるように。まずは近くの農家の方が作られた野菜をたっぷり買おうと思う。

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